
古代日本の天皇の居所や都をたどるとき、しばしば混同されがちなのが 「京(きょう)」と「宮(みや)」です。
- 宮(みや) … 天皇個人の居所であり、政治が行われる宮殿。天皇ごとに移り変わり、奈良盆地や大和地方の各地に点々と築かれました。
- 京(きょう) … 宮を中心に、条坊制(碁盤の目状の街路)によって整備された都市全体。行政機能・宗教施設・市街を含む「都城」を意味します。
したがって、飛鳥時代までは「宮」のみが存在し、天皇ごとに転々としていました。 「京」と呼べる本格的な都城が出現するのは 694年の藤原京 からです。 そこではじめて「宮(藤原宮)」と「京(藤原京)」が明確に区別できるようになりました。
以下に、初代・神武天皇から桓武天皇(平安京遷都まで)までの 「京」と「宮」を分けた一覧を示します。
(あくまでも個人で調べたもので、正確さを保証するものではありません)| 天皇 | 西暦(在位) | 京(都城) | 宮(居所) |
|---|---|---|---|
| 神武(1) | 前660~前585 | ― | 橿原宮(奈良県 橿原市) |
| 綏靖(2) | 前581~前549 | ― | 葛城高岡宮(奈良県 御所市) |
| 安寧(3) | 前548~前511 | ― | 片塩浮穴宮(奈良県 大和高田市) |
| 懿徳(4) | 前510~前477 | ― | 軽曲峡宮(『書紀』)/軽之境岡宮(『記』) |
| 孝昭(5) | 前475~前393 | ― | 掖上池心宮(奈良県 御所市) |
| 孝安(6) | 前392~前291 | ― | 室秋津島宮(奈良県 御所市) |
| 孝霊(7) | 前290~前215 | ― | 黒田廬戸宮(奈良県 御所市) |
| 孝元(8) | 前214~前158 | ― | 軽境原宮(奈良県 橿原市) |
| 開化(9) | 前157~前98 | ― | 春日率川宮(奈良県 奈良市) |
| 崇神(10) | 前97~前30 | ― | 磯城瑞籬宮(奈良県 桜井市) |
| 垂仁(11) | 前29~70 | ― | 纒向珠城宮(奈良県 桜井市) |
| 景行(12) | 71~130 | ― | 纒向日代宮(奈良県 桜井市) |
| 成務(13) | 131~190 | ― | 志賀高穴穂宮(滋賀県 大津市) |
| 仲哀(14) | 192~200 | ― | 穴門豊浦宮(山口県 下関市) |
| 仲哀(14) | 192~200 | ― | 筑紫橿日宮(福岡市東区香椎)※在位内の移動(年次未詳) |
| 応神(15) | 270~310 | ― | 軽島豊明宮(奈良県 橿原市) |
| 仁徳(16) | 313~399 | ― | 難波高津宮(大阪市中央区) |
| 履中(17) | 400~405 | ― | 磐余稚桜宮(奈良県 桜井市) |
| 反正(18) | 406~410 | ― | 丹比柴籬宮(大阪府 松原市) |
| 允恭(19) | 412~453 | ― | 遠飛鳥宮(奈良県 明日香村) |
| 安康(20) | 453~456 | ― | 石上穴穂宮(奈良県 天理市) |
| 雄略(21) | 456~479 | ― | 泊瀬朝倉宮(奈良県 桜井市) |
| 清寧(22) | 480~484 | ― | 磐余甕栗宮(奈良県 橿原市) |
| 顕宗(23) | 485~487 | ― | 近飛鳥八釣宮(奈良県 明日香村) |
| 仁賢(24) | 488~498 | ― | 石上広高宮(奈良県 天理市) |
| 武烈(25) | 498~506 | ― | 泊瀬列城宮(奈良県 桜井市) |
| 継体(26) | 507~511 | ― | 樟葉宮(大阪府 枚方市) |
| 継体(26) | 511~518 | ― | 筒城宮(京都府 京田辺市) |
| 継体(26) | 518~526 | ― | 弟国宮(京都府 長岡京市) |
| 継体(26) | 526~531 | ― | 磐余玉穂宮(奈良県 桜井市) |
| 安閑(27) | 531~536 | ― | 勾金橋宮(奈良県 橿原市) |
| 宣化(28) | 536~539 | ― | 檜隈廬入野宮(奈良県 明日香村) |
| 欽明(29) | 539~571 | ― | 磯城嶋金刺宮(奈良県 田原本町) |
| 敏達(30) | 572~575 | ― | 百済大井宮(奈良県 明日香村) |
| 敏達(30) | 575~585 | ― | 訳語田幸玉宮(奈良県 桜井市) |
| 用明(31) | 586~587 | ― | 磐余池辺双槻宮(奈良県 橿原市) |
| 崇峻(32) | 587~592 | ― | 倉梯柴垣宮(奈良県 桜井市) |
| 推古(33) | 593~603 | ― | 豊浦宮(奈良県 明日香村) |
| 推古(33) | 603~630 | ― | 小墾田宮(奈良県 明日香村) |
| 舒明(34) | 630~636 | ― | 飛鳥岡本宮(奈良県 明日香村) |
| 舒明(34) | 636~640 | ― | 田中宮(奈良県 橿原市) |
| 舒明(34) | 640~642 | ― | 百済宮(奈良県 広陵町) |
| 皇極(35) | 642~645 | ― | 飛鳥板蓋宮(奈良県 明日香村) |
| 孝徳(36) | 645~654 | ― | 難波長柄豊碕宮(大阪市中央区・難波宮跡) |
| 斉明(37) | 655~660 | ― | 飛鳥川原宮(奈良県 明日香村) |
| 斉明(37) | 660~661 | ― | 朝倉橘広庭宮(福岡県 朝倉市) |
| 天智(38) | 668~671 | ― | 近江大津宮(滋賀県 大津市錦織) |
| 弘文(39) | 671~672 | ― | 近江大津宮(同上) |
| 天武(40) | 673~686 | ― | 飛鳥浄御原宮(奈良県 明日香村) |
| 持統(41) | 690~694 | ― | 飛鳥浄御原宮(奈良県 明日香村) |
| 持統(41) | 694~697 | 藤原京 | 藤原宮(奈良県 橿原市) |
| 文武(42) | 697~707 | 藤原京 | 藤原宮(奈良県 橿原市) |
| 元明(43) | 707~710 | 藤原京 | 藤原宮(奈良県 橿原市) |
| 元明(43) | 710~715 | 平城京 | 平城宮(奈良県 奈良市) |
| 元正(44) | 715~724 | 平城京 | 平城宮(奈良県 奈良市) |
| 聖武(45) | 724~740 | 平城京 | 平城宮(奈良県 奈良市) |
| 聖武(45) | 740~744 | 恭仁京 | 恭仁宮(京都府 木津川市) |
| 聖武(45) | 744 | 難波宮(大阪市中央区) | |
| 聖武(45) | 744~745 | 紫香楽宮(滋賀県 甲賀市) | |
| 聖武(45) | 745~749 | 平城京 | 平城宮(奈良県 奈良市) |
| 孝謙(46) | 749~758 | 平城京 | 平城宮(奈良県 奈良市) |
| 淳仁(47) | 758~764 | 平城京 | 平城宮(奈良県 奈良市) |
| 称徳(48) | 764~770 | 平城京 | 平城宮(奈良県 奈良市) |
| 光仁(49) | 770~784 | 平城京 | 平城宮(奈良県 奈良市) |
| 桓武(50) | 784~794 | 長岡京 | 長岡宮(京都府 長岡京市・向日市) |
| 桓武(50) | 794~806 | 平安京 | 平安宮(京都市) |
こうしてみると、日本の古代王権は奈良盆地を中心に移動を繰り返し、やがて京都に至ります。その軌跡は、まさに日本という国のかたちが定まっていく歴史の道のりともいえるでしょう。歴代の宮都を訪ね歩けば、日本の古代がより身近に感じられるはずです。
橿原宮(前660~前585)|奈良県 橿原市
かしはらのみや。橿原市にあったとされる初代・神武天皇の皇居。橿原神宮は、その皇居跡と言われている場所に明治時代に建てられた神社。
葛城高岡宮(前581~前549)|奈良県 御所市
たかおかのみや。第2代・綏靖天皇(すいぜいてんのう)の宮。
https://www.pref.nara.jp/miryoku/aruku/walk_route/route_10/pdf/route-kai_10_7.pdf
片塩浮穴宮(前548~前511)|奈良県 大和高田市
かたしほのうきあなのみや。第3代・安寧天皇の宮。
軽曲峡宮(前510~前477)|奈良県 橿原市軽町
かるのまがりおのみや。第4代・ 懿徳天皇 の宮。

掖上池心宮(前475~前393)|奈良県 御所市
わきがみのいけごころのみや。第5代・孝昭天皇の宮。

室秋津島宮(前392~前291)|奈良県 御所市
むろあきつしまのみや。第6代・孝安天皇の宮。

黒田廬戸宮(前290~前215)|奈良県 御所市
くろだのいおとのみや。第7代・孝霊天皇の宮。

軽境原宮(前214~前158)|奈良県 橿原市
かるのさかいばらのみや。第8代・孝元天皇の宮。
春日率川宮(前157~前98)|奈良県 奈良市
かすがのいざかわのみや。第9代・開化天皇の宮。


磯城瑞籬宮(前97~前30)|奈良県 桜井市
しきみずがきのみや。第10代・崇神天皇の宮。
纒向珠城宮(前29~70)|奈良県 桜井市
しきのたまがきのみや。第11代・垂仁天皇の宮。
纒向日代宮(71~130)|奈良県 桜井市
まきむくひしろのみや。第12代・景行天皇の宮。
志賀高穴穂宮(131~190)|滋賀県 大津市
たかあなほのみや。第13代・成務天皇の宮。

穴門豊浦宮(192~200)|山口県 下関市
あなとのとよらのみや。第14代・仲哀天皇の宮。

筑紫橿日宮(192~200)|福岡市東区香椎
つくしのかしひのみや。第14代・仲哀天皇の宮。

軽島豊明宮(270~310)|奈良県 橿原市
かるしまとよあきらのみや。第15代・応神天皇の宮。

難波高津宮(313~399)|大阪市中央区
なにはのたかつのみや。第16代・仁徳天皇の宮。
難波高津宮の場所は、大阪城本丸地区、高津高校、高津神社など諸説あり。



磐余稚桜宮(400~405)|奈良県 桜井市
いわれわかざくらのみや。第17代・履中天皇の宮。
丹比柴籬宮(406~410)|大阪府 松原市
たじひしばがきのみや。反正天皇(はんぜいてんのう)の宮。
遠飛鳥宮(412~453)|奈良県 明日香村
とほつあすかのみや。第19代・允恭天皇(いんぎょうてんのう)の宮。
石上穴穂宮(453~456)|奈良県 天理市
いそのかみのあなほのみや。第20代・安康天皇の宮。
泊瀬朝倉宮(456~479)|奈良県 桜井市
はつせあさくらのみや。第21代・雄略天皇の宮。

磐余甕栗宮(480~484)|奈良県 橿原市
いはれのみかくりのみや。第22代・清寧天皇(せいねいてんのう)の宮。

近飛鳥八釣宮(485~487)|奈良県 桜井市
ちかつあすかのやつりのみや。第23代・顕宗天皇の宮。
石上広高宮(488~498)|奈良県 天理市
いそのかみのひろたかのみや。第24代・仁賢天皇の宮。
泊瀬列城宮(498~506)|奈良県 桜井市
はつせなみきのみや。第25代・武烈天皇の宮。
樟葉宮(507~511)|大阪府 枚方市
くすはのみや。第26代・継体天皇(けいたいてんのう)の宮。


筒城宮(511~518)|京都府 京田辺市
つつきのみや。第26代・継体天皇(けいたいてんのう)の宮。

https://www.doshisha.ac.jp/attach/page/OFFICIAL-PAGE-JA-323/140191/file/89iseki4.pdf
弟国宮(518~526)|京都府 長岡京市
おとくにのみや。第26代・継体天皇(けいたいてんのう)の宮。

磐余玉穂宮(526~531)|奈良県 桜井市
いわれたまほのみや。第26代・継体天皇(けいたいてんのう)の宮。
勾金橋宮(531~536)|奈良県 橿原市
まがりのかなはしのみや。第27代・安閑天皇の宮。

檜隈廬入野宮(536~539)|奈良県 明日香村
ひのくまのいほりのみや。第28代・宣化天皇の宮。
磯城嶋金刺宮(539~571)|奈良県 田原本町
しきしまかなさしのみや。第29代・欽明天皇の宮。
百済大井宮(572~585)|奈良県 明日香村
くだらのおおいのみや。第30代・敏達天皇の宮。
訳語田幸玉宮(575~585)|奈良県 桜井市
おさださちたまのみや。第30代・敏達天皇の宮。

磐余池辺双槻宮(586~587)|奈良県 橿原市
いわれいけべなみつきのみや。第31代・用明天皇の宮。

倉梯柴垣宮(587~592)|奈良県 桜井市
くらはしのしばかきのみや。第32代・崇峻天皇の宮。
豊浦宮(593~603)|奈良県 明日香村
とゆらのみや。第33代・推古天皇の宮。

小墾田宮(603~630)|奈良県 明日香村
おはりだのみや。第33代・推古天皇の宮。後に、皇極天皇の宮。

飛鳥岡本宮(630~636)|奈良県 明日香村
あすかのおかもとのみや。第34代・舒明天皇(じょめいてんのう)の宮。
田中宮(636~640)|奈良県 橿原市
たなかのみや。第34代・舒明天皇(じょめいてんのう)の宮。
百済宮(640~642)|奈良県 広陵町
くだらのみや。第34代・舒明天皇(じょめいてんのう)の宮。
飛鳥板蓋宮(642~645)|奈良県 明日香村
あすかのいたぶきのみや。第35代・皇極天皇の宮。大化の改新で蘇我入鹿(そがのいるか)が殺された場所。



難波長柄豊碕宮/前期難波宮(645~654)|大阪市中央区
なにわのながらとよさきのみや。第36代・孝徳天皇の宮。


飛鳥川原宮(655~660)|奈良県 明日香村
あすかのかわらのみや。第37代・斉明天皇(さいめいてんのう)の宮。斉明天皇は、皇極天皇(こうぎょくてんのう)と同一人物。


朝倉橘広庭宮(660~661)|福岡県 朝倉市
あさくらのたちばなのひろにわのみや。第37代・斉明天皇(さいめいてんのう)の宮。

近江大津宮(668~672)|滋賀県 大津市
おうみおおつのみや。第38代・天智天皇の宮。第39代・弘文天皇の宮

飛鳥浄御原宮(673~694)|奈良県 明日香村
あすかのきよみはらのみや。第40代・天武天皇の宮。
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藤原京(694~710)|奈良県 橿原市
第41代・持統天皇、第42代・文武天皇、第43代・元明天皇

平城京(710~740)|奈良県 奈良市
第43代・元明天皇、第44代・元正天皇、第45代・聖武天皇、第46代・孝謙天皇、第47代・淳仁天皇、第48代・称徳天皇、第49代・光仁天皇。

恭仁京(740~744)|京都府 木津川市
くにきょう。第45代・聖武天皇の宮。
後期難波宮(744)|大阪市中央区
第45代・聖武天皇の宮。

紫香楽宮(744~745)|滋賀県 甲賀市
しがらきのみや。第45代・聖武天皇の宮。
平城京(745~784)|奈良県 奈良市
第45代・聖武天皇、第46代・孝謙天皇、第47代・淳仁天皇、第48代・称徳天皇、第49代・光仁天皇。
長岡京(784~794)|京都府 長岡京市・向日市
ながおかきょう。第50代・桓武天皇(かんむてんのう)。

平安京(794~1869)|京都市
1180年に平清盛の福原京(神戸)へ一時遷都があるが数か月で京都へ戻る。


